体験型エンタメの新地平を切り拓く「ROOOM」。コロナ禍で隆盛を極める“体験型エンタメ”と“映像エンタメ”を掛け合わせ、PC画面で見るフィクション世界に手元のLINEチャットを使って現実世界から介入するという全く新しい映像体験コンテンツだ。
いかに体験型エンタメとして新しいコンテンツなのか?体験型エンタメと映像を掛け合わせることの良し悪し、さらには今後さらなる進化を遂げる体験型エンタメの未来について、体験型エンタメのプロフェッショナル4名が一堂に会し、時に熱く、時にマニアックに語り尽くした。

※ストーリー上のネタバレはございません。「ROOOM」参加前の方も安心してお読みください※
酒井りゅうのすけ
久保よしや
白坂翔
田口貴章
久保よしや
PROFILE
1991年長野県生まれ。Studio OZON代表。旅行代理店にて法人営業、新規事業部の発足及び副室長を経験。同社退社後、新宿の脱出ゲームの新店立ち上げを経験し、その後も人狼やボードゲーム、謎解きなどの店舗立ち上げやコンサルタント、イベント、マーダーミステリーの店舗のコンサルティングやプロデューサーなどを行う。
酒井りゅうのすけ
PROFILE
1976年兵庫県生まれ。株式会社ミスティブ代表、株式会社BAKERU執行役員。マーダーミステリー専門店”ラビットホール”を都内に複数展開。2014年に株式会社九月の聖地を設立。テーマパークアトラクションや2.5次元舞台等のクリエイティブ部としての業務を行いながら、ボードゲームカフェ“JELLY JELLY CAFE”の運営や演劇ユニット“聖地ポーカーズ“のプロデュースも行う。ポーカー・テキサスホールデムのトーナメントディレクターとしても全日本大会等にも従事。
白坂翔
PROFILE
1984年生まれ、元自衛隊で元ホスト。ボードゲームカフェJELLY JELLY CAFEオーナー、将棋カフェCOBINオーナー、マーダーミステリー専門店Rabbitholeプロデューサー、株式会社人狼の代表取締役。
田口貴章
PROFILE
1975年埼玉県生まれ。株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメントにて、営業、宣伝、タイアップのコーディネート、アニメテーマソングのコーディネートなどを務め、アニメ『はちみつとクローバー』などの音楽プロデューサーを担当した後。いきものがかり、School Food Punishment、さよならポニーテール、夢みるアドレセンスらの制作ディレクターを担当。その後舞台の企画・制作などを経て、現在は新規ビジネス開発に従事し、マーダーミステリードラマ『アオイウソ~告白の放課後~』の企画・プロデュースなどを行っている。
「ROOOM」を体験してみて
「ROOOM」で私が面白いと思ったのは多人数の中で抜きんでたアクションを行う「お、すごいじゃん!」みたいなことが出来ると承認欲求や成功体験に結びつきやすいんだなあと。例えば、「この人がこういう状況で危ない」とか推理した内容がLINEチャットで飛び交って、飛びぬけるというか推理が現状を先取りして当たるというか、そういうちょっと特別な感じを味わえる人が出てくるというのがすごくいいなと思いました。近いものでいうとリアル脱出ゲームとかもそうで、全員が成功するわけじゃないけど3~4%の一部の人達が成功するとかというのは特別感や成功体験があって面白いと思うし、一体感があって、さらにその一体感の中でロイヤルカスタマーを作りやすい構造だし、癖になって次もやる、次もやるってなると面白いんじゃないかなと思いました。そういう構造が「ROOOM」には入っていたので、そこが火種になるのかなと思うし、似た構造が含まれた作品が増えていったら楽しいだろうなと思いました。誰かがスポットを浴びるというのはやはり大きいですよ。
これまでは、体験型エンタメを作りたい人が映像制作側にアプローチすることがほとんどだったように思っていて、「ROOOM」のように映像側から体験型エンタメ側にアプローチすることって珍しいですよね。僕の知っているアスミック・エースは、映画の製作・配給会社の中で最もサブカルチャー的というか、尖ってるけれどヒット作を送り出していた代表っていう印象があって。そういう会社が体験型エンタメ側のBAKERUにアプローチをしてきた、というのが「ROOOM」を体験する前にワクワクしていたことですね。
で、いざ体験してみると、「ROOOM」はPCでの動画視聴とLINEのオープンチャットを使う作品だったのですが、動画を見たことがない、LINEを使ったことがない、という人はほぼいないと思うんですよね。なので、日常的にやっている行動の延長線で参加できる体験型エンタメになっていて、すごく可能性があるように感じました。
田口さんが言う通り、「映像を見る」「LINEを使う」という日常的に当たり前にやる2つを足し算してる。これって意外と少なかったじゃないですか。オンラインの体験型エンタメを模索する中でZoomやFacebookのMessengerなど様々な組み合わせが生まれたけど、「ROOOM」のようなシンプルな組み合わせのパターンが決して革新的なわけではないんだけど、めちゃくちゃわかりやすい、全員できるというところが面白いと思いました。なにかの「種」になりうるコンテンツだなって。「ROOOM」に参加して思ったのは、生配信ではなく撮り終わっているものに対して体験をのせるということの始まりになりそう、広がりそうということ。「ROOOM」をきっかけにノウハウが生まれていって、もっと体験のある映画とか視聴体験の形を変えるやり方があるんじゃないかな、と思いました。今回はホラーでしたけど、他のいろんなジャンルもあるし、なんか見えてくると面白いと思います。「ROOOM」は映画だったから面白いと思う部分はあって、映画なのにLINEするんだという感覚。「これは映画だ」と認識しながら、でもLINEをしていて、そのLINEが生駒ちゃん演じる主人公に届いているみたいな錯覚を作り出す。この錯覚をどれだけもっとトリックを使って体験をしている感を増やせるか、がこれから重要な気がしています。
近年のオンライン体験型エンタメの流行について
やっぱりコロナは避けて通れないかなと思いますね。オンラインでの体験型エンタメに行かざるをえなくなった人たちが頑張った結果、盛り上がったみたいな側面はあると思うんですよね。
いや、めちゃめちゃそうですよね。
もうこっちでいくしかないと言うか。本当はオフラインでやりたいし、オフラインの方が満足度高いのは分かっているんだけど、オンラインでもどうにか満足度を上げられないかと思ってみんなが頑張った結果、クオリティの高いものが各業界で生まれ始めたという風に見てます。
僕は自分のことをどちらかというとオンラインで遊ぶタイプのプレイヤーだと思っているんですね。新しいSNSとかがあったらすぐアカウント取っちゃうし、でも、いざ自分がコンテンツを作るとなった時に、オフラインが好きなんですよ。舞台のプロデュースとかをやっている関係もあって、オフラインに特化して作っていたんだけど、やっぱりコロナがあってオンラインで作らざるをえないという前提になった。「何が作れるんだろう?」と模索した結果のここ1~2年なんです。そんな中でイケてるものも出てきたし、この状況じゃなかったら考えられなかっただろうなというアイデアもかなりの数、見かけました。そういう意味ではオンラインでの体験型エンタメの進化が早まったという意味で僕はポジティブにこの状況を見てますね。もちろん良いコンテンツも悪いコンテンツもありますが。
この4人の中でいわゆるお客さんとして一番遊んでいるのは僕かもしれないんですけど、(酒井)りゅうのすけさんの話に付け加えるなら、「脱出」「謎解き」「マーダーミステリー」「イマーシブシアター」などの体験型エンタメはおそらく去年(2020年)にピークを迎えるはずだったと思うんですね。オンラインではないコンテンツが数多く用意されていたし、参加したいという機運が高まっていた。でも、それらがコロナの影響で、ことごとく出来なくなってしまった。なので、オンラインの体験型エンタメが流行するタネは2020年に既にまかれていたんだろうと思うんです。また、Zoomというオンラインコミュニケーションのためのツールが、オンラインの体験型エンタメにインスピレーションを与えてくれたなというのをすごく感じますね。オンライン用コミュニケーションツールみたいなのはいっぱいあるとは思うんですけど、Zoomがなかったらオンラインの体験型エンタメは、まただいぶ変わっていたんじゃないかなと思っています。それほどZoomの存在は大きかったと思います。一方で、インスピレーションを与えたけれど、それに縛られた、それ以外のものをあまり使えなくなった、という側面もあるかもしれないですが。
私は今まで「どういうツールでオンラインのエンタメをやったらいいのか」という模索をしてきた側の人なんですけど、例えば「マダミ談義」というトーク主体のイベントをZoomでやったり、YouTubeで配信したりしてきましたし、100~200人が入れるイベントをSpatial Chatでやったりしてきたんですけど、やはりZoomが市場的に浸透しているというのは大きいと思いましたね。DiscordとZoomってぶっちゃけほとんど出来ること・やれることってそんなに変わらないんです。でも、Zoomって「みんなダウンロードしてるよね」みたいな市場としての前提が持てていたことが、結果的に我々作り手が選びやすいプラットフォームになったのかなとは思ったりしますね。
なんでZoomだったんだろうな?
Zoomがその時の象徴というか。Zoomの画面というものがフレームとして状況を伝えやすかったというのもあるんじゃないですかね。もちろん浸透しているからではあるんですけど。
Zoomって、ホストが会議のURL飛ばせば、参加者はアプリとか不要だったのも大きいよね。
なるほど。
だからコロナ禍になった直後、誰かがZoomを見つけて「ここに来て」って言ったら行けたのよね。そのタイミングで、アカウント不要でURLから参加できるのはすごい独自性だったのかもしれないですね。
あと、「Zoom会議」とか「Zoom飲み」みたいな言葉の流行も大きいですよね。
「オンライン飲み」じゃなくて「Zoom飲み」って言ったのが強いよね
それ言ったら他のツールは入ってこないみたいな。
「スマホ」じゃなくて「iPhone」っていうみたいな
オンライン体験型エンタメにおける「映像」の融合について
映像って非言語的なアプローチができて、かつ情報量が圧倒的に多いと思っているので、結果的に没入感や体験感を説明口調ではない方法で引き上げやすいなと思っています。あえて描写されていないことで妄想させる効果もあり、やはり映像は情報量が多いので体験型エンタメと組み合わせると、没入感は圧倒的に出しやすいし、すごくリッチになるなと感じています。
情報量が多いのはその通りですが、一方で情報量が多いからこそ答えになってしまい過ぎるというのはデメリットでもあるなと感じています。僕は「マーダーミステリー」の制作をしているのもあって、“アナログな見立て”という技をすごく使うんですね。 “見立て”というのは、「こういうものを想像してくださいね」という。例えば「アンティーク家具が置いてあるちょっとクラシックなカフェにあなたたちはいます」と言われた時にユーザーの脳内にあるリソースを引っ張ってきて物語を見立てていく、ということをやっている感覚があるんですね。それが映像だとモニターに答えがあって、それを受動的に見ちゃう時に介入しづらいんじゃないかなって思う部分は正直あるんですよ。映画とかドラマって見てれば進むじゃないですか。なので、あなたが物語の中にいるんだぞという体験感をいかに作り出すかが課題だと思っている感じですね。僕はとにかく、物語の中にプレイヤーが入ることが楽しいと思っていて、物語の視聴者でいて欲しくないんです。でも、映画でいうと『ロッキーホラーショー』は映画を見ながら踊るという体験を作り出すことに成功していましたね。
良し悪しですよね。例えば「カフェ」という言葉でも想像する「カフェ」は人それぞれ。同じ「カフェ」という言葉で想像するものが違って会話がちぐはぐになるよりは、映像から見えているもので共通認識をもって話せるという利点も絶対ありますよね。だから、コンテンツによって、どちらの方向性でやりたいのかによって、想像させたいのであれば映像を使わない方がいいかもしれないし、決まったもので会話させたいなら映像を使った方がいいかもしれないしという感じがありますよね。
「体験型エンタメ」と「映像」の関係というのは、オフラインの体験型エンタメとオンラインの体験型エンタメでも違うように個人的には感じてます。オフラインで使われる映像って、手元に持ってるデバイスやプロジェクターに映し出されたものなど、基本的にはフレームに入って、リアルとは区切られているフレームの中の映像ですよね。一方でオンラインでは、元々PCなりスマホなり画面の中で全てが完結するので、馴染みやすいんだと思います。そして、映像は予算とクオリティが割と直結するので、体験型エンタメの中に映像に対してドカンと予算が投下できるようなことはあまり無いと思うので、下手すると映像がコンテンツ全体のクオリティを下げかねないようなことになる気がします。でも基本的には、オンラインの体験型エンタメと映像のマッチングは、すごく良いんじゃないかなと感じます。
やれるならガンガン映像は使いたいんですけどね。使うところのアイデアさえ間違えなければなんぼでも。それこそ久保くんが言ってるリッチに持っていけるので、予算とマンパワーと時間さえあれば。
そういえばTVのdボタンも体験型に含まれますよね?リアル脱出ゲームも何年か前に、謎解きをしながら先に進むみたいなことをTV番組でやってたんです。でもそれ以降あまり見かけない。「なんでだろう?」と考えたんですけど、おそらくマネタイズがしづらいのがあって、さらにいうとまだ早かったのかなって思います。TVはまだ見るものだったと思うし。でも、少しずつ変わってきていて、Netflixの「ブラック・ミラー:バンダースナッチ」は非常に面白くて、選択すると分岐した映像が観れるようになっていて、それは結構ヒットしたみたい。だから、もっと個人にフィットし、マッチさせることにフォーカスさせられると没入感とか映像体験は底上げできるのかなと思っています。みんなに広く体験させたいとなると、映像がもつ視覚からのアプローチとあえて見せない部分からのアプローチが結構面白いし、好きだとも考えています。それを体験型エンタメと呼ぶのかわからないですけど、モキュメンタリージャンルの「放送禁止」のように見ていると気づくみたいなものもいいと思っていますし、映画『カメラを止めるな!』は映像と体験型エンタメを組み合わせていた印象で、徐々に素地はできているのかなと思いますね。
「ブラック・ミラー」のあのシステム、あれ以来全然見かけないよね。
ありそうで出てこないですね。
少しずつ映像で体験型エンタメを実現しようというコンテンツはあって、Netflixオリジナルにはたまに入ってますね。そういうのがどんどんデジタルになってハイセンスになっていくと思うんだけど、TVには尺の問題がきっとあるから難しいとは思う。配信系だとそういう融合は見られるんじゃないかなと思いますね。
体験型エンタメ側の視点でいうと、お客さんが増えた方がいいじゃないですか、総論として。映像って目だけ開けてれば見れるから受動的なものだけど、「天空の城ラピュタ」をTVで見ていて「バルス」ってツイートくらいの気軽さや参加の度合いでまずはいいと思っていて。「ツイッターのトレンドに入ることに自分も参加した」というのが面白いからみんな参加するっていう。受動的にただ見るだけでも面白いという作りの映像になっていて、さらにそこに何かしら体験型の楽しさも加わるというのは、これまで体験型エンタメの面白さに全く触れてこなかった人に対して、映像をベースに何かワンアクション、ツーアクションすることで、それ以上の体験型ならではの楽しさを乗っけられるという可能性があると、「ROOOM」を体験してより感じました。
体験型エンタメって意識していなくても、何か体験していることって映像作品とか映像番組とかでありますよね。
技術革新とかによって映像と体験の関係はどんどん色濃くなっていくと思っていて、多分そのきっかけとなるような作品は「ブラック・ミラー」しかり出てくるんだろうなという気持ちはしますね。「ROOOM」も振り返ってみればそういう先駆けになってるかも。
体験型エンタメの未来について
私は究極的な話をすると、映像という観点では360度VRとかで自分がアクションして、物語に分岐が起きて、それで進んでいって自分の手なり足なりを使って何か行動したことが実際の物語に影響してくるというコンテンツが出てくるんだろうな、結局そこに行き着くんだろうなと思います。擬似的な人生を生きること。それが最終的なゴールになる。役割を与えられて“ごっこあそび”をするのが「TRPG」であったり、「マーダーミステリー」であったりで、それを傍観するのが「イマーシブシアター」だと思っていて、VR映像で自分が体験するものになっていくと思うんですね。その前段階として映画館やYouTube、動画配信サービスなどで選択して分岐するというような、今はその分岐が3~4個かもしれないけど、いずれは10~20個あるいはもっとシームレスになって自分が発言した内容をAIが判別して、とかはまずあるんじゃないかと。いずれにせよ、それがdボタンであったり、Netflix「ブラック・ミラー:バンダースナッチ」のように選択肢をリモコンで操作することであったりとテクノロジーの進歩と結びついて変化していくのかなと思います。この点については、あまりオンラインでもオフラインでも変わらないと思っていて、映画館も4DXみたいに椅子が動く、匂いがする、水が出てくるみたいな感じで、いわゆるテクノロジーでもって物理的に体験させるといったものがある。体験の発展にはどうしてもハードというか機能的なもの、テクノロジーの進化は伴ってくるのかなと思います。
僕も、いま話題の「メタバース」というか、仮想現実空間的な別の世界に自分のアバターみたいなのがいる世界、そういうことに限りなく近づくんじゃないかと思います。通信速度がアップしたり、デバイスの性能が良くなることも関わってくる。体験型エンタメということで言うと、今はまだ個人というか小さなグループ・組織で頑張っていて、アイデアや企画はあるけどマンパワーが足りない、本当なら予算をもっと使いたいのに、みたいなことが正直多いと思います。そういった人たちと何かしらのテクノロジーを持っている企業や、予算が出るような仕組みが結びついていけるといいのかなと思っていて。その為にはやっぱりヒット作や象徴する人が出てきて、「こういったものを遊びたい」「こういったものを作りたい」というような、面白い人や能力を持った人が集まるような業界になっていったら素敵だなと、そうなったら良いなと思っています。
「メタバース」って言葉も出てきたんですけど、僕は元々ネット廃人なんですね。仮想空間のセカンドライフで住民を送っていた時代が3年ほどありまして、もう一つの故郷みたいな感覚が僕の中にはあって…(笑)。「仮想空間、メタバース、わかるわかる」みたいに感傷に浸っていましたが、正しい発展方法って2人の答えがほぼほぼそうだよねっていう風にも共感していました。僕が面白いって思うものや理想像をちょろっとだけ話しておくと、とにかく僕がいる現実と物語の世界をぐちゃぐちゃにしたいんですね。「マーダーミステリー」というのはそういうのを結構ぐちゃぐちゃにしてくれる。垣根を飛ばして没入させてくれて、物語の中に自分が入ったような感覚を作ってくれる「ストーリーテリング」の手法だなと感じていて。それってお芝居でも映画でも共通で、今の自分と地続きの可能性あるよねって気付いた瞬間に好きなコンテンツになるという。それがもっともっと色々な技、「ストーリーテリング」も手法も錯覚もそうだけど、テクノロジーも使って発展すると思っています。なのでテクノロジー的にはXRにめちゃくちゃ興味を持って意識をしている感じです。XRと映像というのも相性が良くて、普通のメガネなんだけど、プロジェクションされて、その人にとっては風景がちょっと違って見える。そこで何かが起きて、見えてくることで現実が歪み始めると思っていて。ウォークマンの発明で人は音楽を連れて街を歩けるようになり、スマートフォンの発明で人は知識・インターネット・PCを外に連れて歩けるようになった。XRがどこかのタイミングでもっと使いやすいデバイスに変わった瞬間、空間ごと連れていけるみたいなことが起こるはず。その時に、物語を持った空間ごと連れて出ることができるっていうのに僕はめっちゃワクワクしていて、そういう未来が欲しいと思ってます。体験型コンテンツを語る時、手法とプラットフォームがごちゃごちゃなんですよ。「イマーシブシアター」「ARG」「トランスメディアストーリーテリング」「TRPG」「マーダーミステリー」とか。ちゃんと組み分けると、「TRPG」「マーダーミステリー」とかはストーリーテリングの手法であって、この手法の応用でその先にどんなコンテンツが作れるだろうかと。マーダーミステリーの手法を使って映画という映像コンテンツと合体したときに何ができるだろうという考え方で、そこに人の錯覚を作ることで映像と映像の中にある物語と、視聴者さんが持っている現実とがぐちゃぐちゃみたいな錯覚を作ること。僕はそういうコンテンツが好きだし、そういうコンテンツを作りたいと思っているから、体験型コンテンツというのはそっち側にガンガン言ってほしいという夢を持っている感じですね。
思い付きで話すと「メタバース」って凄い関連があると思っています。「メタバース」ってもう一つの世界ってことだと思うんですけど、僕らがRabbitholeでやっているマーダーミステリーなんかはアナログなメタバースだと思います。自分の人生と違う人生を見たいと思うことなんですよね。今の現実世界とは違う自分を演じてみたい、というのが魅力だと思っていて、それを体験できること、物語の主人公になりたいみたいな。昔はそれがドラクエの勇者になった気持ちみたいなことで、自分と照らし合わせて楽しんでいたんですが、技術の進歩だとかによって、主人公そのものになれるみたいなことだと思います。例えば「ルサンチマン」っていう漫画があって、VR世界と現実の区別がつかないみたいな話で、そんな時代に結構近づいてきているなと。今はVR装置は一部のガジェット好きしか持っていないと思うんですけど、それがサングラスぐらいのサイズでできるようになったら、メタバースが一般化して…と。「ルサンチマン」みたいな時代が来たら、体験型エンタメのクオリティがガッと上がって、色んな人が面白いことを考えてくれるだろうなというのは思ってます。
「ホラー」とは「体験型エンタメ」である
ホラーというものに焦点を当ててみると、ホラーというジャンル自体がそもそも体験型エンタメだ、と思うんですよね。「体験」とは何かと考えた時に、それは想像することであり、自分事にすることが体験型エンタメだと考えているんです。自分が主体的である必要があって、その主体であることがホラージャンルに内包されていると感じたんですよね。例えばホラー映画を見た後に、自分の家の開いている戸棚の隙間が気になるとか、映画と地続きになっている恐怖や、日常に非日常が食い込んでく流れというのが体験だと思ったんですよ。どうやって非日常な特別な体験を日常の中に意識させるか、コンテンツと地続きにさせるかということをうまくできると面白いものになっていくんじゃないかなって思うんですよね。それが「ROOOM」は出来ていると思っていて、LINEというツールも馴染みがあって日常に食い込んでいるツールなので、そこに対しての驚きや地続き感をうまくアプローチできるなと思います。さらにホラーと体験の相性によって日常をうまく繋げる。つまり、主人公と繋がるコンテンツでありつつ、本質的に「私は生駒ちゃん演じる主人公になれるんだ」っていうことをかなり思ったコンテンツでした。
僕はどちらかというとホラーは苦手な方なので、ホラーについて考えたことがあまりなかったんですけど、なんかすごい分かりました。
ジャパニーズホラーなんてまさにそうですけど、いわゆる自分たちの結構身近で共感しやすい自分の家とか団地とかでやるじゃないですか。もしかしたらそうかもしれない、もしかしたらいるかもしれないっていう風に思わせるのって妄想を超えているなと思うんですよね。だから恐怖するし。なのでホラー自体が体験エンタメではないか、と思っていて、さらにそこにリアルな自分たちのアイテムや自分たちの行動が紐付く、出てくるっていうのが体験感や没入感に繋がっちゃうなーと思いましたね。
そういうことを意識して「ROOOM」ではホラーというジャンルを選んでいるんですかね。ホラーと動画とLINEっていう組み合わせ、計算し尽くされているわけじゃないですか。今の久保さんの論でいうと。
そう。だから凄い伸びるかもしれないし伸びて欲しいなという要素が揃っていると思っています